18 (For Now) Reasons Why Unconventional Monetary Policy Will Not Work

日本銀行が実施しているいわゆる「異次元緩和」というものが、何で効果がないか、あるいは無駄なことか、考えられる理由を箇条書きにしてみる。もちろん、以下の一つ一つは慎重に吟味されるべきであるが、そういったことがなされていないこと自体が不満なので、とりあえず問題提起の形で書いてみる。とりあえずさっと書いたので、おいおい修正していく。

何もをもって、効果があると考えるかだが、とりあえず、「2%のインフレを達成する」ことが目下の目標として挙げられている。おそらく、そのためには、まずは何らかの効果によって、総需要を刺激しすることで、物価上昇につなげると考えるのが自然だと思うので、そういうチャンネルを基に考えていく。もちろん、この考え方自体もチャレンジされてもよい。

1. マイナス金利といっても0.1%位金利を動かしたくらいでは何も大きくは変わらない。昔は不況になったときには3-4%くらいは平気で落とすことができたので効果があったのだと思う。例えば、1.0%の金利で資金を調達できた時に金融機関が貸し出しをしなかったプロジェクトに対して、調達コストが0.9%になったからといってどれくらいのプロジェクトに新たに貸す気になるだろうか?最近は長期金利もかなり低く、更に下がる余地は小さい。

2. おそらくマイナス金利といったところで、あまり大きくマイナスにはできない。池尾さんという方がマイナス金利についてここでとてもわかりやすく纏めている。実際、マイナス金利についてとりあえず学びたいなら、僕のブログを読むよりこのリンク先の記事のほうがずっと役に立つと思う。

3. 銀行はおそらく預金金利にパススルーできない(預金金利が大きくマイナスになったら皆現金を引き出すだろう)だろうから、銀行の利益が多少は圧迫される。このことは、おそらく銀行のリスクテイク能力を弱め、貸し出しを抑制する方向に働くかもしれない。逆に、この効果はとても小さいということは、そもそもマイナス金利の効果が小さいといっているようなものだ。

4. 銀行がマイナス金利でダメージを受けることで、そのほかのルートにおける資金調達のコストが上がるかもしれない。

5. 僕が注意を払っていないからかもしれないが、今回のマイナス金利も唐突に出てきた。このように唐突に次から次えといろいろな政策を実施すると、いわゆる「政策の不確実性(policy uncertainty)」を増すことになり、銀行に限らず様々な経済主体がリスクをとることを躊躇する状況を作り出すかもしれない。中央銀行が何をするかわからない状況では企業は新規投資に慎重になるのではないか。

6. 最近はどうも、「サプライズ」であることが重要と考えているらしいが、そういう考え方自体が1970年代以前の古臭いものである(流動性の問題があるときには異なるかもしれないが、現在の日本の問題は金融セクターのパニックではない)。最近の考え方は、政策は(テイラールールなどの)ルールに(明示的であれ暗黙であれ)従って、経済主体が予測しやすいように金融政策を実施していくのが標準的な考え方だと思うが、そういった最近の考え方を完全に無視している。

7. 消費者は様々な異次元緩和策に反応して消費を増やすだろうか?金利が下がれば、おそらくは金利収入を当てにしている高齢者の消費は抑制されるであろう。特に日本は高齢者の割合が高まっているのでこの効果は無視できない気がする。

8. もし異次元緩和策が株式などの金融資産の価格を高める効果があったとしても、おそらく株(あるいはインデックスファンドのようなもの)を大量に所有している人の消費性向は低いだろうし、そういう人は、一時的な株価の上昇で消費を急に増やしたりはしないことが考えられる。

9. 低金利に誘導することによって住宅価格も上昇しているとしたら、若い人の住宅購入を困難にしているかもしれない。

10. 政策の不確実性によって先行き不透明な状況になれば、企業も正規の社員よりいわゆる派遣社員のような契約を解除しやすい雇用形態を望むであろう。若い人が比較的この二つの雇用形態のマージンにいるとすると、借り入れ制約・流動性制約に引っかかっており、消費性向が高い若い人の消費が抑制される。

11.  異次元緩和は経済主体の将来のインフレ期待を高め、実質利子率を下げ、あるいは将来の消費財の価格を高めることで、現在の投資や消費を刺激することを求めているのかもしれない。ただ、インフレ期待をコントロールするのは難しい。まずは、中央銀行がちゃんとインフレ率に多少でも影響を与えるできることが示されなければ何を言ったところで、信用されない。2%をずいぶん前に達成できるといっておきながら、いまぁなぁなぁで、誰も責任を取らないような状況で、誰が中央銀行の能力を信用するだろう。

12. 日本銀行はちゃんと3つのツールの効果を総合的に分析するフレームワークを持っているのだろうか?経済主体は、総裁の説明を見て、日本銀行はインフレをちゃんとコントロールできると思うだろうか。

13. 金融緩和によって円が安くなり、純輸出が促進されるかもしれない。但し、最近のEconomistの記事では2012年以降、円が弱くなったにもかかわらず、輸出数量はあまり変わっていないことを指摘している。その考えられる理由のひとつは、今は多くの輸出がサプライチェーンの一環としての中間財の輸出であり、為替が変わってもあまり影響を受けないのかもしれないと述べられている(このことについては近日触れる)。

14. 輸入の方は、今回注目している(金融緩和→総需要喚起→インフレ)というチャンネルと異なるが、為替が減価することで輸入インフレが起こる可能性がある。しかも、もしかしたら、原油価格はそろそろ底を打つかもしれない。但し、原油価格が上がると、インフレに寄与するかもしれないが、オイルショックのときのように、景気に水をさすかもしれない。

15. ゼロ金利の元では、そもそも、短期の国債とマネーは同じようなものであり、マネーで短期の国債を買っても、友達の10円玉と自分の10円玉を交換するようなものであり、何も動かない(いわゆるWallace Neitrality=Wallaceの中立性)。

16. 長期の国債などの金利が低下した場合、年金基金の資産運用に悪影響を与えないか?そうすると、将来もらえると期待する年金の金額が減ることで現在の消費が抑制されたり、その穴埋めとして将来的にさらなる財政支出(と増税)が必要となり、現在の消費を抑制するかもしれない。もちろん政府の利払いは低金利で恩恵をこうむるのでどちらの効果が強いかわからない。

17. ある意味「政策の不確実性」が生み出す「将来の年金の不確実性」自体も消費を抑制する方向に働くだろう。

18. こういう記事を読んで、そうか、異次元緩和とか名前はたいそうでも効かないのかぁ、 と思ってしまう人が増えると、実際に効かなくなって、予想が成就するのかもしれない。期待は重要なのだ。

0 comments:

Post a Comment