Evidence-Based Policy against Loud Voice

今回は、最近話題になっている、「受動大声規制」について書いてみる。

  • まわりで大声で話されると気分が悪くなるというのは、皆知っていることであるが、最近、大声で話す人が近くにいると子供の健康を害するという確かなエビデンスが蓄積されてきた。これに基づいて、主に公共の場で大声で話すことを禁止する動き(「受動大声規制」)が高まっている。
  • 大声が健康に良くないというエビデンスは、複雑な計量経済学的手法に基づいて得られたものなので、ここでは説明はしないけれども、経済学者がエビデンスがあるといった場合には100%正しいので、信じて欲しい。
  • ちょっと専門的なことに興味のある人のために書いておくと、このエビデンスは、いくつもの最近の実証的な研究に関するメタスタディに基づいている。一個一個の研究では、統計的に有意な結果は得られていないけれども、メタスタディをすることで、有意な結果が得られた。まぁ、細かいところは気にしないで欲しい。
  • より細かいところが気になる人のためにちょっと書いておくと、そのうちの多くの実証研究は、4.5-6畳一間の家庭で、夫が常にものすごい大声で話している状態が20年以上続いた家では、妻がノイローゼになったりして体調を壊すケースが(統計的に有意ではないけれども)多いことに基づいている。これらのエビデンスを元にすると、レストランでおじさんた達が大声で話していると、子供も体調を壊すことは確実である。子供の健康を守るために、大声は禁止しなければならない。
  • 大声で話す人が近くにいると健康に悪影響を与えるというのは、国際的なエビデンスからもはっきりしている。例えば、アメリカ人は大声な人が多いが、アメリカ人は平均寿命が日本人に比べて短い。このエビデンスは、大声が健康に悪影響を与えることを示唆している。
  • ただ、大声で話す人は、年齢が高めの人が多い。政治家も声の大きい人は多い。よって、「受動大声規制」はなかなか、投票する有権者及び、政治家に支持されないことが問題である。レストラン等で大声を規制すれば大声でしゃべりたい彼らは損害をこうむることになるが、受動大声で健康を害する人のほうが重要なのは議論するまでもない。
  • しかも、大声の人が重要な顧客であるレストラン・居酒屋等も、受動大声規制をすると売り上げが落ちてしまうということから、レストラン・居酒屋業界が反対をしている。受動大声規制がレストランや居酒屋の売り上げに影響を与えるか否かというのは、決着がついていない問題である。例えば、レストランや居酒屋の経営者に、受動大声規制が実施されたら売り上げにどう影響を与えるかと聞いてきたところ、売り上げが落ちるという意見が大多数をしめていた。但し、こんなものは、強いエビデンスとは言わない。
  • 逆に、最近は、売り上げに負の影響を与えないという強いエビデンスが出てきている。25年前に富山県滑川市で受動大声規制を導入してみたところ、売り上げは落ちなかったという強いエビデンスが有名なものである。25年前に富山県滑川市で売り上げが落ちなかったというエビデンスがあるんだから、今、全国的に受動大声規制を実施しても100%大丈夫である。
  • ちなみに、大声が禁止されているレストランは既にたくさん存在しているし、インターネットで検索すれば簡単に見つかる。こういう状況で何で全てのレストランで受動大声規制を導入しなければならないかは、受動大声が子供などの健康に悪影響を与えることから明らかである。
  • 加えて、近年の行動経済学の知見によると、大声を出している人は出したくて出しているのではなく、自分をうまくコントロールできていないことがわかってきた。よって、大声が出しづらい環境にすることで、大声を出さなくて良くなった人の幸福度も高まることが期待される。極端な話、公共の場で大声を出した人には罰金を課すという政策も、意思に反して大声を出してしまう人を幸福にするという面で有効な政策であり、今後検討してゆきたい。
  • 今後は、このような、エビデンスに基づいた政策決定がよりいっそう広まって欲しいものである。

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