Declining Labor Share

NBER Reporter(NBERに所属する研究者が自分の最近の研究の内容をテクニカルになり過ぎないように説明している刊行物)でLoukas KarabarbounisとBrent Neimanが、労働分配率の低下について書いていた(リンク)のでメモしておく。

労働分配率というのはGDPのうちどの割合が労働者に(主に賃金として)分配されているかを示している。普通は2/3くらいと考えられている。この割合が安定しているというのは、マクロ経済における重要な事実のひとつと考えられてきた。モデルで言えば、代表的企業の生産関数にコブ・ダグラス型の生産関数を使う根拠となっている。

しかし、最近の研究では、この割合が低下してきていることが示されている。GDPにおける労働者の「取り分」が低下しているというのは、所得不平等の度合いが拡大しているという事実とも関連している。労働分配率が低下するということは、直接あるいは間接的に企業を保有している人(大体は高所得者)に分配されうる所得が増えることを意味するからである。

下のグラフは、アメリカにおいて1975年以降の労働分配率がどのように変化してきたかを示している。赤の点線は経済全体の労働分配率、黒の実線は、法人企業のみの労働分配率である。企業のみの労働部分配率を見ているのは、政府や非法人企業の収入を資本の取り分と労働者の取り分に分けるのが難しいからであるが、どちらも同じように動いている。
経済全体の労働配分率は65%程度の水準から60%近くまで落ち込んだことが見て取れるであろう。この傾向は、アメリカだけではない。次のグラフは、日本、中国、ドイツを示している。いずれも低下傾向にある。
次のグラフはもっと多くの国について、1975年から2012年の労働分配率の変化率をまとめて表示したものである。
労働分配率が上がった国もある(たとえば韓国、ブラジル)が大半の国、特に先進国においては労働分配率は低下した。彼らは一連の研究において、この低下の理由を分析してきた。以下はそのハイライトである。

  1. 労働分配率の低下は大部分の国で起こっているので、ある国・地域特有の政策・現象では説明できない。労働組合が強い国(スカンジナビア諸国などの大陸ヨーロッパ)でも起こっている(労働組合の力の低下はどの国でも同時並行的に起こっていると思うのだけれども…)
  2. 労働分配率の低下の一部は、産業の構造変化(労働分配率が低い企業が高い企業に比べて拡大した)で説明できるが、労働分配率の低下は大部分の産業の内部で起こっているので、それだけではない。
  3. もちろん、産業の内部において、労働分配率が低い企業が拡大し労働分配率の高い企業が縮小したというストーリーは彼らのデータによって棄却されない。
  4. 彼らが重視しているチャンネルは、生産が労働を多く使うものから資本を多く使うものへシフトしたというものである。ちょうど、労働分配率の低下と時を同じくして、IT関連の資本の価格が低下した。もし、資本と労働の代替の弾力性が1を超えていれば、資本の価格が例えば1%低下したときには、資本を1%以上多く使う生産様式にシフトするので、収入のうち資本(労働)に支払われる部分が上昇(低下)し、労働分配率は低下することとなる。
  5. と言うわけで、重要なのは、資本と労働の代替の弾力性の大きさなのであるが、一国の中のデータを使うと弾力性の推定値は1を下回るものの、彼らがたくさんの国とたくさんのセクターのデータを使ってえた推定値は1.25であった。この弾力性の推定値を使うと、労働分配率の低下の半分は(ITなどの)資本の価格の低下によって説明できる。
  6. 残りの半分は何によって説明できるだろうか?企業のマークアップ率の上昇、それに伴う利益の増加、によるものではないか。
労働分配率の低下と関連している重要な結果として、企業の貯蓄が大きく増加したということが挙げられる。1980年ごろは家計の貯蓄が企業の投資に使われていたが、企業の利益が増加する一方、配当の伸びはそこまで大きくなかった結果、企業の内部留保は大きく拡大した。
上のグラフは、労働分配率が減少した一方、労働に分配される以外の部分がどこに行ったかを示している。資本への支払いや税支払いはあまり増加していない一方、企業の内部の貯蓄される金額は増加してきている。企業セクターが経済における借り手から貸し手に変わったことが経済全体にどのような影響を与えるかは今後の研究課題としている。

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